タイトル「2016年度危機管理学部」、フォルダ「2016年度危機管理学部 - 危機管理学部
シラバスの詳細は以下となります。
科目ナンバー   RMGT1303 
科目名   リスクマネジメント論  
担当教員   河本 志朗,山下 博之  
対象学年   1年   開講学期   前期  
曜日・時限   火4  
講義室   1502   単位区分   必  
授業形態   講義   単位数  
授業概要・キーワード   我々を取り巻く社会生活の中には、国際紛争、自然災害、テロ、大規模な事故、感染症の発症など様々なリスクがあることを紹介し、リスクとは何か、それはどのような形で我々の周りに存在しているのかを具体的かつ理論的に理解する。次にそうしたリスクについて、我々はどのように認知しているのか、そしてそれをどのように受容しているのかについて、社会的な背景や心理学的な背景の中で把握する。そのうえで、我々はそうしたリスクについてどのように対処していくべきなのか、リスクマネジメントの基礎を学び、さらに東日本大震災を契機に注目されているリスクコミュニケーションのあり方などについて、具体的な例を挙げて検討していく。
    各授業について、参加者の興味や理解度に応じて適宜変更することもあるので、留意頂きたい。
(キーワード)リスク、リスクマネジメント、リスク認知、リスク評価、リスクの受容、リスクコミュニケーション、リスクトレードオフ  
授業の目的   現代社会が抱える国際紛争、自然災害、テロ、大規模な事故、感染症等の多様かつ複雑なリスクに対し、やみくもにゼロリスクを求めるのではなく、科学的根拠に基づく合理的かつ現実的に対応しようという姿勢や学際的な知識を身に付けていくことが本授業の目的である。  
到達目標   次の点を身に付けるのが本授業の目標である。
・リスクに対し科学的根拠に基づき合理的かつ現実的に対応しようという心構え。
・リスクに対し多角的に取り組むのに必要な理学、工学、社会科学など学際的な知識。
・リスクの特定、分析、評価、対策まで一貫した知識。基礎的なリスクマネジメント能力。  
履修条件 必須のため特になし。  
成績評価の方法 以下の方法で総合的に評価する。
授業内のレポート(2回):40%
リアクションペーパー(7回):30%
授業参加度:30%  
授業区分
内容
1(概要) ガイダンス:「リスクマネジメント論」では何をどう学ぶか?
(内容) 本講座の目標や各授業の内容、スケジュール、学習方法や参考資料等について説明する。
(運営方法) 講義
(予・復習) 
 予習:なし
 復習:授業内容のうち目標やスケジュール等につついて再確認する。
2(概要) リスクとは何か?
(内容) 「リスク」とはいったい何であろうか。「リスク」と似た言葉には、「危険」、「危機」、「不確実性」などの言葉がある。これらの言葉は、日常的な会話はもちろん、メディアや専門家の議論の中でも、しばしば混同されたまま使われている。だが、「リスク」はこれらの概念と明らかに異なる概念であり、定義を明確にしないまま本学部で危機管理について学ぼうとすれば、混乱が生じるであろう。一方で「リスク」の定義が明確になれば、「危険」、「危機」などの概念では捕捉できない問題を捕捉できるようにもなる。
 そこで、本授業では「リスク」の定義について、具体的な事象を挙げながら確認していく。「リスク」の概念について理解し、生活の中で私たちを取り巻いているリスクに対する気付き得ることが、授業の目的である。
(運営方法) 講義
(予・復習)
 予習:将来、私たちの身体や生命、財産に損害を与える可能性のある事象や現象を「リスク」と定義した場合、自分の身の回りにどのような「リスク」があるかをノートにリストアップしておく。
 復習:授業で挙げられた「リスク」の例に、自分があらかじめリストアップしておいた「リスク」と異なるものがなかったか、確認する。
     授業で挙げられた参考文献や参考資料を読む。
3(概要) リスクと社会
(内容) 私たちの暮らす社会は、自然災害や事故、感染症、国際テロなど、私たちの生活、財産、所属する組織に危害を及ぼしうる様々な事象に満ち溢れている。だが、実際の所、私たちはそうした事象の全てを「リスク」として認識しているわけではない。ある事象を「リスク」として捉えるかどうか、またはどのような「リスク」として捉えるかは、住んでいる国や地域、職業、所属する組織、年齢、性別などの社会的属性によって異なるからである。
 では、社会的属性に応じて、個人の考える「リスク」はどう異なってくるのだろうか。そして、そのようなリスクの捉え方は、社会の変化とともにどう変わっていくのだろうか。本授業では、これらの点を検討していく。検討を通じて、「リスク」が個人の立場や社会的属性、時代に応じて異なってくる相対的な概念である点を理解することが、本授業の目的である。
(運営方法) 講義
(予・復習)
 予習:自分が住んでいる地域にはどのようなリスクがあるのかをノートにリストアップしておく。
 復習:授業を踏まえ、自分の住んでいる地域のリスクリストに付け足すべきリスクがないかどうか確認し、あれば付け足しておく。
     授業で挙げられた参考文献や参考資料を読む。
4(概要) リスクマネジメントプロセス(1)認知
(内容) 私たちの暮らす社会は、私たちの生活、財産、所属する組織に危害を及ぼすような様々な事象に満ち溢れている。だが、実際の所、私たちはそうした事象の全てを「リスク」として認識しているわけではない。第3回の授業では、その理由としてリスクと社会との関係に着目した。本授業では、同じ問題について、よりミクロな観点から検討する。
 個人や組織が、ある事象に「リスク」を発見することをリスク認知とよぶ。「リスク」やその兆候は必ずしも視覚、聴覚などによって知覚できるものとは限らず、リスク認知はそう簡単に行われるものではない。したがって組織や個々人のリスク認知の有無が、ある事象に対し「リスク」を見出す人と見出さない人がいるという結果を招くことがあるのだ。
 では、実際の所、人々はどのように「リスク」を認知し、あるいは認知しないのだろうか。そしてその過程にはどのような問題があるのだろうか。これらの点を検討しながら、リスク認知のメカニズムやバイアスの問題について理解することが、本授業の目的である。
(運営方法) 講義
(予・復習)
 予習:事例として特に国際環境問題と日本の公害問題に触れるので、高校の社会科教科書を使って復習する。
 復習:私たちの身の回りに、国際環境問題や公害問題のように目に見えないリスクが他にないか調べる。
     授業で挙げられた参考文献や参考資料を読む。
5(概要) リスクマネジメントプロセス(2)評価と受容
(内容) ある事象が「リスク」として認知されたとしても、必ずしもその「リスク」がリスクマネジメントの対象となるわけではない。その事象がリスクマネジメントを必要とするほどのものではないと評価される可能性もあるからである。リスクは、評価の結果、必要があると認められた時にようやくリスクマネジメントの対象となるのだ。そして、リスクマネジメントの必要がない、またはできないと評価された場合には、そのリスクを「受容」することになる。
 では、リスク評価の局面で、「リスク」のどのような点がどのように評価されているのだろうか。また、私たちはどのような「リスク」を受容しているのだろうか。そこにはどのような課題があるのだろうか。これらの問題を検討しながら、リスクマネジメントにおけるリスク評価の役割や課題を理解することが、本授業の目的である。
(運営方法) 講義
(予・復習)
 予習: 事例として津波の例に触れるので、東日本大震災で発生した津波被害の概要を確認する。
 復習: 授業で挙げられた例の他に、私たちが受容しているリスクがないかどうかを調べ、ノートにリストアップしておく。
     授業で挙げられた参考文献や参考資料を読む。
6(概要) リスクマネジメントプロセス(3)管理の技法
(内容) 将来何らかの損失を与えうる事象のうち、「リスク」として認知され、管理の必要があると評価されたものがようやくリスクマネジメントの対象となる。本授業では、こうした段階で行われるリスクの管理方法に焦点を当てる。
 リスクの管理には、リスクが発現し実際に何らかの損失を与えるようになるのを抑止する方法と、いざ損失を与える事象となった時でもその損失が小さくなるようできるだけ抑制する方法がある。実際のところ、どのようにしてこうした「リスク」の管理が行われているのだろうか。本授業では、国や自治体などの行政機関や民間企業はもちろん、私たち個々人がリスクを管理するために行っている具体的な取り組みについて検討する。国や自治体、企業におけるリスクの管理方法やそこで生じる課題を理解することが、本授業の目的である。
(運営方法) 講義
(予・復習)
 予習: 事例として地震リスクの例を挙げるので、地震のリスクを減らすために自分や家族が行っている取り組みをノートにリストアップする。
     授業で挙げられた参考文献や参考資料を読む。
7(概要) リスクマネジメントプロセス(4)リスクコミュニケーション
(内容) リスク認知やリスク評価の過程を経て、ある組織やある人々にリスクと捉えられるようになった事象が、別の組織や別の人々にも同様のリスクとして捉えられるとは限らない。それどころかある事象がリスクとして管理されるようになったことが、かえって別の組織や人の損失になるということが往々にして起こってくる。
 こうしたリスクをめぐる関係者間の意識の違いや利害対立を調整し、解消するための取り組みは、リスクコミュニケーションとよばれる。リスクをめぐる認知や評価は、地域、組織、個人によって往々にして異なってくる。そのためリスクコミュニケーションは、リスクマネジメントのプロセスの中でも特に重要な局面となってくる。では、リスクコミュニケーションはどのように行われるのか。そしてどのような課題があるのか。本授業ではこれを検討する。リスクマネジメントの過程における、リスクコミュニケーションの役割と重要性、課題を理解することが本授業の目的である。
(運営方法) 講義
(予・復習)
 予習:自分の身の回りにあるリスクの中でも、最も避けたいと思うものを3つノートにリストアップする。
 復習:授業で配布した資料をもとに友人と防災クロス・ロードを行う。
     授業で挙げられた参考文献や参考資料を読む。
8(概要) リスクマネジメントにおける科学と専門性
(内容) 現代社会では、リスクの認知、評価、管理のいずれの段階においても、科学技術や専門的知識を欠かすことができない。例えば、リスクを発見(認知)するには監視(モニタリング)技術が、評価するには検査技術などが用いられ、そこで得られる情報を正しく解釈するには専門的知識が必要とされる。
 一方でこうした科学と専門性にも限界がある。リスクを管理していく過程には「科学なしには解決できないが、科学だけでは解決できない」問題が少なくないからである。
 では、リスクマネジメントの過程で、科学や専門性が具体的にどのような役割を果たし、そこにはどのような限界があるのか。これらの問題を検討しながら、スクマネジメントにおける科学と専門性の役割と限界を学ぶことが本授業の目的である。
(運営方法) 講義
(予・復習)
 予習:事例として2009年に発生した新型インフルエンザH1N1の例に触れるので、当時の新聞記事やインターネットを使って概要を調べておく。
 復習:参考書として挙げられている『科学技術社会論の技法』を読む。
9(概要) 自然災害におけるリスクマネジメント(1)地震災害
(内容) わが国は「地震大国」と呼ばれ、古くから国や自治体はもちろん、企業や個人なども含む各レベルで、地震災害に取り組んできた。そこで本授業では、地震対策におけるリスクマネジメントに焦点を当てる。
 中でも、発生する可能性の高さや、発生した場合に想定される被害の大きさから、戦後特に厳重な取り組みが行われてきたのが東海地震である。こうした東海地震に対し、これまで政府や自治体がどのような取り組みを行ってきたのか。そしてどのような限界があるのか。本授業では、これらの問題をリスクマネジメントの観点から検討する。地震災害に対する国や自治体の取り組みとその課題について、リスクマネジメントの観点から理解していくことが本授業の目的である。
(運営方法) 講義
(予・復習)
 予習:東海地震に関して現在想定されている被害を確認し、ノートにメモしておく。
 復習:南海トラフ巨大地震について、どのような被害が想定されどのような取り組みが行われているのかを調べる。
10(概要) 自然災害におけるリスクマネジメント(2)風水害・土砂災害
(内容) わが国では戦後の水防・砂防事業により、風水害・土砂災害の被害を着実に減らしてきた。だが、近年、都市化の進展によりいわゆる「都市型水害」が頻繁に発生するようになり、また豪雨の発生頻度や雨量も増加してきている。では、こうした中で国や自治体は風水害・土砂災害に対するどのような取り組みを行っているのだろうか。
 本授業では、風水害・土砂災害に対する国、自治体の取り組みをリスクマネジメントの観点から検討する。実は、風水害・土砂災害に対する国や自治体の取り組みは、民間企業の利益や人々の生活の便などとのトレード・オフを伴うことがあるため、非常にナーバスな問題でもある。これをどのように解決していけばよいのか。本授業では、特に自治体のリスクコミュニケーションに着目しながら検討していく。風水害・土砂災害に対する国や自治体の取り組みと課題をリスクマネジメントの観点から理解していくことが本授業の目的である。
(運営方法) 講義
(予・復習)
 予習:授業で、2014年に発生した広島の土砂災害に触れるため、新聞やネットを使って概要を調べておく。
 復習:参考書として挙げられている『ドキュメント豪雨災害―そのとき人は何を見るか』を読む。
11(概要) 感染症のリスクマネジメント
(内容) 現在わが国で、死亡した国民の死因として最も多いのは悪性新生物(がん)によるものである。しかし過去に遡ってみると、かつて死因として最も多かったのは、肺炎や胃腸炎、結核などの感染症だった。では、このように感染症による死亡を減らすことができたのはなぜだろうか。そして現在、どのようなことが課題とされているのか。本授業では感染症に対する国の取り組みに着目し、リスクマネジメントの観点から考えていく。感染症に対する国の取り組みと課題について、リスクマネジメントの観点から理解することが本授業の目的である。
(運営方法) 講義
(予・復習)
 予習:授業で天然痘の事例に触れるので、この感染症の概要について参考書やネットで調べておく。
 復習:参考書として挙げられている『感染症―広がり方と防ぎ方』を読む。
12(概要) 火災のリスクマネジメント
(内容) かつて消防士といえば、火災現場で火を消し止め火災の被害を減らすことが主な仕事だった。だが、実は近年、そうした状況は変わってきている。むしろ消防士にとって、火災の発生をいかに防ぐかという予防行政が重要な仕事となってきているからである。消防機関の役割は、火災発生後のクライシスマネジメントから、火災発生前のリスクマネジメントにシフトしてきているのである。
 では、火災に対する国や消防機関のリスクマネジメントはどのようなものであろうか。そこにはどのような課題があるのだろうか。本事業ではこれらの点を検討していく。火災の発生状況や国や消防機関の取り組み、課題を確認し、これらをリスクマネジメントの観点から理解していくことが本授業の目的である。
(運営方法) 講義
(予・復習)
 予習:近年の火災の発生状況(発生件数、年齢別死者数、火災の発生源等)について『消防白書』を使って調べておく。
 復習:参考書として挙げられている『火災の科学―火事のしくみと防ぎ方 』を読む。
13(概要) 環境問題のリスクマネジメント
(内容) 地球温暖化のようなグローバルな問題にしろ、公害のような限られた地域での問題にしろ、環境問題への取り組みの特徴として共通しているのは、多くの関係者が関わってくるという点である。例えば地球温暖化への取り組みになると、国や民間企業、外国政府をはじめ、国際機関やNGO・NPO、地方自治体、地域住民などの主体が関わってくることになる。それだけに、環境問題の解決には、様々な立場の主体で問題意識や解決策に関する合意を形成が不可欠である。他のリスクとくらべ、リスクコミュニケーションがより必要とされる問題ということができる。
 では、実際のところ、国や自治体が環境問題にどう取り組んでいるのか。そしてどのような課題があるのか。本授業では、これらの問題をリスクマネジメントの観点から検討していく。環境問題に対する国や自治体の取り組みの現状と課題を知ることが本授業の目的である。
(運営方法) 講義
(予・復習)
 予習:事例として京都議定書に触れるため、京都議定書の概要を調べておく。
 復習:2015年11月30日から12月11日にかけて開催されたCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)の論点や結果について調べる。
14(概要) 犯罪・国際テロに対するリスクマネジメント
(内容) ITの技術革新やグローバル化など、わが国を取り巻く状況は著しく変化している。それに応じて、犯罪の性質や方法も変わってきており、戦後の日本がこれまで余り経験してこなかった国際テロなどの問題にも直面するようになった。こうした変化に対し、わが国でもこれまでと異なる対策が求められるようになっている。では、実際の所、こうした犯罪や国際テロに対し、わが国はどのように取り組んでいるのか。そしてどのような課題があるのか。本授業ではこれらの点をリスクマネジメントの観点から検討していく。
(運営方法) 講義
(予・復習)
 予習:近年のわが国における犯罪の発生状況や国際テロの発生状況を調べる。
 復習:わが国でかつて発生したテロについて調べる。
15(概要) まとめ:何を学んできたか、これからどう学ぶか?
(内容) これまでの授業で学んできた点を整理し、これから理解をさらに深めていくべきポイントや、参考資料について紹介する。
(運営方法) 講義
(予・復習)
 予習:これまでのノートと資料の内容を確認する。
 復習:これまでのノートと資料に目次をつけるなどして情報を整理する。
関連科目 危機管理概論Ⅰ・Ⅱ、リスク・コミュニケーション  
教科書 特になし
(適宜、レジュメや資料を配布する)  
参考書 ・藤垣裕子、2005年『科学技術社会論の技法』(東京大学出版会)。
・井上栄、2006年『感染症―広がり方と防ぎ方』(中公新書)
・中谷内一也、2006年『リスクのモノサシ―安全・安心生活はありうるか』(NHKブックス)。
・谷口武俊 他、2008年『リスク意思決定論(シリーズ環境リスクマネジメント)』(大阪大学出版会)。
・山岸俊男、2010年『リスクに背を向ける日本人』(講談社学術信書)。
・辻本誠、2011年『火災の科学―火事のしくみと防ぎ方  』(中公新書ラクレ)
・橘木俊詔 他編、2013年『リスク学入門(新装増補 リスク学入門 第1巻)』(岩波書店)。
・稲泉連、2014年『ドキュメント豪雨災害―そのとき人は何を見るか』(岩波新書)  
オフィスアワー  
領域比率:災害マネジメント  
領域比率:パブリックセキュリティ  
領域比率:グローバルセキュリティ  
領域比率:情報セキュリティ  
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